04 – デボラ、聖書女性

イスラエルの母となった 女預言者デボラ   (士師記4章―5章)

デボラはヨシュア記からサムエル記の間、士師記に登場する12人の士師の中で唯一の女性
です. 士師の中には剛力なサムソンや戦略家のギデオン等がいます。 当時モーセから引き継いだヨシュアはカナンの地の原住民を征服し、イスラエル人がカナンに定住した時代でした。しかしイスラエルの民は生活が安定してくると、主を離れ他の神々に仕え主に逆らって悪を行い、彼らは敵の圧政に苦しむようになるのが常でした。彼らはしえたげられ、悩まされ、呻き悲しみ主に叫び求めたので、主は彼らのためにさばきづかさ(士師)を起こされ、そのさばきづかさの存命中、主はさばきづかさと共におられ彼らを敵の圧政から救いだされました。(士師記2:18)これが幾度も繰り返され、その都度さばきづかさが起こされイスラエルの民を救った歴史が士師記です。

 カナンの王ヤビンと鉄の戦車900両を誇る将軍シラセは20年間イスラエル人を激しく虐げたので、彼らは主に向かって呼び求めました。そのころラビドテの妻、女預言者デボラがイスラエルをさばいていました。さばくとは裁くことも含まれますが、神の言葉で人々を正しい道に導きイスラエルの民を治めていました。デボラは神様の託宣(民を救うこと)をバラクに伝えました。「一万人を率いてタボル山に進軍せよ。わたしはヤビンの将軍シセラとその戦車と大軍とをキション川のあなたの所に引き寄せ、彼をあなたの手に渡す」と。(士師4:6、7) しかしバラクはデボラが彼と一緒に行くことを条件としました。バラクは戦車を持っていると聖書に書いてありませんし、敵の強靭な戦車と軍隊を見ると心が怯むのも理解できます。せめて神様が共におられるデボラが彼と一緒に行ってくれれば勝ち目はあると考えた答でした。これは神様のみ旨からすると、預言者デボラをとうして勝利が与えられるのではなく、神様の約束の言をバラク自身が信じ、神様がバラクと共に戦われると確信するべきでした。バラクは目に見えない神様への信頼より目に見えるデボラに依存する姿勢があり、御言葉の約束を大事にする余地がありました。デボラは神様への信頼はぶれることなく微動だにしていません。「私は必ずあなたと一緒に行きます。けれどもあなたが行こうとしている道ではあなたは光栄をえることはできません。主はシラセを一人の女の手に渡されるからです。」

 バラクは一万人を引き連れてタボル山に上り、デボラも彼と一緒に上り陣を構えました。その報告を聞いた将軍シラセは鉄の戦車900両全部と一緒にいた民を皆キション川に呼び集めました。そこでデボラはバラクに「さあ、立ち上がりなさい。今日主がシラセをあなたの手に渡される日です。主はあなたに先立って出られるではありませんか」と激励しました。バラクは一万人を従えてタボル山から下りました。900両の戦車を前にしてバラクはどのような戦略があったのでしょうか。いいえ神様が天から戦われました。神様の戦略は実に最高の方法でした。「天からは星が下って戦った。その軌道を離れてシセラと戦った。キション川は彼らを押し流した」(士師5:20,21)とありますように、天候が急変し雷雨が激しくなりキション川の水が溢れ、戦車は押し流され機能不能となり敵陣は総崩れて剣に倒れ、残った者は一人もいませんでした。将軍シラセは戦車から飛び降り徒歩で逃げ去りましたが、たどり着いたへベルの天幕でへベルの妻ヤエルの機転で滅ぼされました。

 戦いが終わりデボラとバラクは「主をほめたたえよ。私は主に向かって歌おう。主にほめ歌おう」と主に感謝の歌をささげています。勝利の秘訣は彼らによるものではなく、主が先に歩まれ主が天から戦われたと主をたたえています。又シラセの滅びはへベルの妻ヤエルの貢献によるものと、彼女を讃えることを忘れませんでした。しかし主はデボラとバラクを用いてイスラエルを救われたのです。「デボラよ、ついにあなたは立ち上がり、イスラエルの母となった」(士師5:7)とあるように、母が自分の子供たちの幸せを願うように、デボラはイスラエルの民の幸せを願い、国と民を守るため勇敢に戦うこともいとわず、日ごろは棕櫚の木の下で民の相談事に耳を傾け、神様の言葉をもって励ましていました。神様がデボラと共におられ、国はその後40年間太平でした。一人の人が神様を信頼し、神様が共におられると信じ続ける限り、神様はその人と家族、周囲の人々を守り平安を約束されます。
   「見よ、わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」(イエスの言葉)

古山礼子